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月面配信―動画作成局―

ボイスドラマやゲーム実況、歌ってみた動画の投稿&イラスト製作の投稿などを行います

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リリカルなのはextend5

燃えさかる公園の上空で起こった大爆発はバリアを砕いた後も収まらず、巨大な黒煙を上げながら激しい衝撃波を周囲に拡散させた。辺りの草木は吹き飛ばされ、暗闇を照らす電柱は鈍い音と共に折れ曲がる。やがてその凄まじい爆風の奔流が収まり始めた時、ようやく黒煙からとある影が飛び出してきた。

「…………」

影の正体はたった今爆撃に巻き込まれた筈なのはであった。彼女は服こそボロボロに焦げ汚れていたが、至って致命的なダメージを受けた様子は無い。更に片腕には爆弾共々自爆した女性が疲労した様子で抱えられていた。女性は手足を垂らし動く様子は無かったが、やはり大きな傷はつけられていないようである。

「レイジングハート、大丈夫だよね?」

【No problem(問題ありません)】

なのはは神妙な面持ちでその言葉に頷くと、レイジングハートの切っ先を公園に向ける。

「魔力探知」

それはなのはの簡易的な魔力反応の調査手段であった。レイジングハートの杖先の結晶が輝き始め、魔力の反応を探査する。切っ先を向けられた地点の魔力の反応が強い程、結晶の輝きは濃い桃色へと変化する仕組みだった。なのはを追い詰めた灰色の魔法陣は未だ炎が治まっていない公園の地面からはすっかり消えていたが、そこに向けられたレイジングハートの色は通常色の桃色。つまり、微かな魔力の反応がそこには残っている。

(もし、誰か別の仲間がこの人を使って私を倒そうとしたのなら、
その人はきっとまだあそこに隠れてる……!)







同時刻。
公園の茂みの中ではなのはの予想通り隠れている男がいた。男は黒いローブを頭から被り、灰色の杖を握り締めている。表情は隠れていて周囲から見ることは出来ない。男は吐き捨てるように呟いた。

「チッ、管理局の白い化け物め。どうやってあの爆発から逃れたんだ?いやそれよりも、だ。
あの女、爆弾まで持たせたのに生かされてしまった。せめて奴だけでもきちんと消して置かなくては……」

しかし男の言葉は最後まで続かなかった。

「!!これは、魔力集束……!?」

慌ててなのはのいる方向を向くが既に遅い。桃色に輝く巨大な魔力の集束は既に完了しており、肉弾でもはっきり見えるそれはまるで桃色の砲台のように強固に固められている。







集束を終えたなのはは間髪いれずに砲撃を放った。

「ディバインバスターーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」

男が砲台と感じ取った魔力集束から繰り出されるそれは、まさしく人間から繰り出されるものとは思えないほど太く分厚い魔力の塊であった。夜の闇を昼の如く照らし出す桃色の閃光の塊は1秒と掛からないうちに公園の大地へと激突し、拡散しながら激しい音を立てる。光が空を切る音と大地を抉る音の両方が辺りに鐘の音のように響き渡り、先ほどの大爆発よりも遥かに巨大な衝撃があたりを包み込んでいく。

「……これで、おしまいっ」

なのははレイジングハートをクルリと振り回しながら魔力の流れを切り、砲撃をすぐに終了させた。わずか数十秒ほどの出来事であったが、公園の大地には恐ろしく巨大なクレーターが刻み込まれ、敵によって放たれた炎はすっかり爆風で消し飛ばされていた。そして、そのクレーターの中に、

「ぐうぅ……がっ……はぁっ……」

男は無様に地面に押し潰されていた。体は半分程地面に埋まっており、見えている部分も砲撃のダメージからかピクピクと痙攣しているのみである。なのははそれを見つけると、男の近くに飛来し声をかける。

「あなたも多分この女の人と同じ『パンデラ』の一員なんですかね。『管理局員への魔力による攻撃』、及び『大規模都市破壊』の容疑で現行犯逮捕します」

言葉を発せれない男に代わり粛々となのはは言葉を終え、魔力によるバインドを施した。両手足を縛る魔法で、女性にも同様の処置を取る。

「でも危なかった……この女の人本当に自爆するつもりだったよね」

【I believed that I was in time(私は間に合うと信じていました)】

「あはは、私もだよ♪」

言いながらあの刹那の時を思いだす。

女性の抱える爆弾が炸裂する直前、レイジングハートは爆弾を小型のバリアで覆い尽くし、その間なのはが女性の手からそれを払いのける。すぐにバリア内で爆弾が爆発するがバリアが砕けるまでには数秒の猶予があった。僅かながら生まれた時間、そして爆弾との距離を利用し、なのはは砲撃を放ったのだ。ただし、それは周囲から魔力を集束するものではない。自身の中に眠る魔力のみを使った瞬間的な砲撃。もはや『砲撃』と言うよりは『爆撃』に近い技だった。なのはの巨大な魔力を炸裂させて起きたその爆発は、爆弾の爆発を遥かに上回り、結果的に周囲に凄まじい衝撃を与えるほどの大爆発となったのである。

「爆弾よりもちょっと周囲への影響は強くなっちゃったけど、この人も助けられたしプラスマイナスゼロって所、かな?」

【It may be slightly close(少し際どい所かもしれませんね)】

「うっ、もうちょっと威力は抑え目でも良かったかも……」

などとのんきに話していたなのはであったが、拘束した男が持っていた灰色の杖を見て訝しい顔になる。

「うん?」

杖は丁度レイジングハートの半分程度の大きさで、杖先には灰色の結晶……ではなく。

「これ、デバイスの結晶じゃなくて、ただの石?」

基本的に魔導師の持つ杖には核となる結晶体が取り付けられていることが多いのだが、男の持っていた杖先に取り付けられているのはどこにでもあるような灰色の石であった。はたから見ても魔力は感じられない。

「これで魔法を扱うことなんて、出来るのかな」

疑問を抱えつつ、なのはは二人の身柄を拘束したまま時空管理局へと向かって飛び立つのであった。
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| 過去書庫『リリなのex系』 | 12:06 | comments:1 | trackbacks:0 | TOP↑

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リリカルなのはextend4

素早く終わったものの、確かな戦闘の爪跡が残る公園の端に彼女達はまだ佇んでいた。なのはは魔法で捕らえた女性を更に三重のバインドで拘束し直すと、ようやく女性に向き直って言う。

「あなたの名前を聞かせて貰えますか?」

「…………」

女性はなのはの目をしばらく見つめていたかが、小さく首を振った。

「言いたくありませんか?」

「言う必要は無い」

「どうして、ですか?」

「あなたはやはり強いな、高町なのは」

質問に答えずそう返した女性に、なのはは困ったように肩を竦める。それから大して驚いた様子も無く言った。

「やっぱり、偶然じゃなく私を狙っていたんですね」

「…………」

(もしもこの人が本当に最近世間を騒がせている『パンデラ』の一員なら、『管理局員失踪事件』は無差別で起きているわけじゃなく、最初から狙った人だけを捕らえていることになる。そして、多分……)

「あなたのお仲間も既に何人か拘束したとの連絡が入っています。ここであなたが情報を出し惜しみした所で、誰も助けには来ませんよ?」

「何?」

女性は訝しげな目でなのはを見つめる。

「そんな連絡は……」

言いかけて彼女はハッとした。

「…クッ、カマをかけたのか……!」

「あはは、すいません」

頭を掻きながら多少おちゃらけたように答えるなのは。悔しそうに頭を項垂れる女性を尻目になのはは真面目な表情に戻ると、レイジングハートと小声でのやり取りをする。

「やっぱり単独犯じゃなかったね」

【that's so(そうですね)】

「それでも彼女のこの余裕、どうやらお仲間さんがまだこの周囲に隠れてるのかも……」

【She appeared suddenly, too(彼女も、突然現れましたからね)】

「そういえば……」

女性が突然現れた時、なのはとレイジングハートは両者共に尾行の可能性を疑い周囲を警戒していた。それなのに女性が現れた気配は突然現れた。まるでこの世界とは別次元のどこからそこに現れたように何の前触れも無く。

「……ククッ」

「ん?」

頭を項垂れていた女性が小さく笑ったように見えた。なのははそれを見て瞬時に本能的に感じ取る。

(まずい!!)

「てやああああああーーーー!!!!」

なのははレイジングハートの杖先で思い切り女性の腹部を殴りつけた。

「ぐぇあっ!!!」

痛みで仰け反る女性をあっという間に片手で抱え上げると、その場から魔力で飛び上がる。…その数秒後。

地面に一瞬鈍い灰色の魔法陣が浮かび上がるのと同時に、爆音と閃光が弾け飛ぶ。強力な熱気は周囲を包み込み、先ほどまでなのは達がいた場所を焼き尽くしていた。大地が勢いよく砕け散り、上空に爆煙と土煙が上がっていく。視界が曇らないよう、なのははすぐさまその煙から逃れようと空中を飛び急ぐ、が。

(煙が……追いかけてくる!?)

飛んでも、払い上げても、煙はまるで生き物のように執拗になのはを追いかけてきていた。どう考えてもその動きは自然のものではなく、明らかに彼女を追尾する魔法によるものである。

(駄目、振り切れないっ!)

周囲を包み込みかけた煙を前に彼女は声を上げた。

「レイジングハ-トっ!!」

【Protection(防護壁)】

桃色の魔法壁が再びなのはの周囲を覆いつくしていく。素早いその防壁の力は強力で、追尾していた煙も流石にそこまでは入ってこれない。しかし、それが命取りとなった。

「待っていたよ、この時を…!」

「え!?」

見ると抱えていた女性の手には何やら丸い鉛色の物体が握られている。

(まさか……!)

「私は捨て石、だから名乗る必要は無いのさ!」

鉛色の塊が内側から真っ白な閃光を迸らせて行く。

(爆弾!!)

頑丈な防御壁の内部でそれは炸裂し、中にいた二人は猛烈な爆撃の中に掻き消える。逃げ場はどこにもなく、その爆弾の威力の凄まじさを物語るように壁は爆発の形に丸く盛り上がった。

そして、ついにはガラスが砕けるようにあっさりと弾け飛んだ。

| 過去書庫『リリなのex系』 | 22:27 | comments:3 | trackbacks:0 | TOP↑

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リリカルなのはextend3

電車から降りたなのははしんと静まり返る公園わきの夜道を歩いていた。通っていたのはヴィヴィオの待つ家へ向かうには少し遠回りとなる帰り道。公園近くの森に囲まれたその道は、夜は少し不気味でありもちろん周りに人影は無く、なのはの履くハイヒールがカツカツと道を踏む音だけが一定間隔で鳴り響いている。歩くペースは変えないまま彼女は薄っすら背後に視線を向け、

「……多分、誰もいないよね?」

と、首にかけていたレイジングハートへ小声で語りかけた。レイジングハートもなのはに合わせていつもより小さな音声と輝きで答える。

【Probably there is no state of the tail for the moment
(恐らく。尾行の様子は今の所ありません)】

「そっか、少し心配だったから様子見ちゃったけど、気にしすぎだったかな」

【It is not a bad thing to be careful(慎重なのは悪いことではないです)】

ふふふと思わず笑みをこぼして、なのははレイジングハートを優しく撫でる。

「そうだね。ありがとう」

すっかり先程までの不安も薄れ、なのはの気持ちも多少緩んだ思いでいっぱいになっていた。早く家に帰りレイジングハートとヴィヴィオとのんびりしたい。そんな気持ちになりかけていた時であった。

「ん!」

彼女の穏やかな顔つきが一瞬で鋭いものとなる。

【Master(マスター)】

「うん、分かってる。さっきまで誰もいなかった筈なのに、いきなり誰かの視線を感じた。見られてる、今この瞬間も」

密かに忍び寄る存在を気配から感じ取った二人は、直ちに仕事モードに切り替わっていた。レイジングハートは直ちに輝きを抑えながら変身のための魔力を溜め始め、魔力収束の間なのはは、物怖じせず気配のした方を向き声をかけた。丁度、道から外れた森の茂みの方向である。

「……誰かいますか?最近は誘拐事件もニュースになってますし、こんな時間に森の中をうろつくのは危ないですよ」

自分のことを棚に上げたそんな注意勧告を、何も関係の無い一般人がいた時のため彼女は穏やかな表情で伝える。茂みの方からはなんの反応も無い。なのははもう一度慎重に距離を取りながら声をかけた。

「誰もいませんか?……本当に危ないと思うんですけど」

彼女が言い終えるのと、それが放たれるのはほぼ同時の出来事だった。なのはが顔を向けていた方向と丁度正反対の方角から鈍い銃弾の発射音が響き渡る。音に反射的に反応してなのはは弧を描くように素早く飛び上がった。なんとか回避された銃弾は森の茂みにぶつかり、炎上。一瞬にして茂みが激しく燃え上がっていき、暗闇に包まれた夜がみるみるうちに炎の輝きで照らされ始める。

「レイジングハ-ト!」

【Comprehension!barrier jacket!(了解!バリアジャケット!)】

魔力収束を完了していたレイジングハートの力で、なのはは瞬く間に白い魔導師服の格好へと姿を変える。片側にまとめられていた髪は後ろ側で二房に別れまとめられ、クールなスーツとズボンは白と青で構成されたドレスのようなものへと変化している。更に手には身の丈程はある巨大な魔導杖へと変貌したレイジングハートがしっかりと握られていた。これが彼女の戦闘時の正装バリアジャケットであり、また、管理局の誰もが知るエース・オブ・エースの有名な姿でもあった。変身を終えたなのはは一度地面に降り立つと、炎上する茂みを大きな杖で力強くなぎ払う。

「はぁあ!!」

勢いよく燃え上がりかけていた炎があっさりと風圧で吹き消され、辺りは再び深淵に包まれる。しかし、敵はいなくなったわけでは無い。場が暗くなる瞬間を狙い、再びなのはに銃弾が連射される。暗闇の中でなのはに銃弾を見分ける方法は無い。だが、

【Protection(防護壁)】

レイジングハートの素早い音声と共になのはを囲む桃色のバリアが展開され、銃弾は魔力壁に完全に防がれる。弾かれた銃弾の音に反応して振り返るなのは。なのはは銃弾が放たれた方向を目視すると、杖の先端をそちらへ突きつけて構えた。

「ショート、バスター!!」

僅かな時間桃色の輝きが周囲をフラッシュのように照らし、収束完了と共に素早い砲撃が発射された。雅に輝くその一撃は銃弾を放ってきた者がいると思われる茂みを見事に打ち抜き、小さな爆発と共にそこを吹き飛ばした。

「ぐわぁああ!!!!」

なのはとは別の、女性の悲鳴が上がる。爆風で持ち上げられた土埃の中で、なすすべなく飛ばされかけるその声の持ち主をなのはは見逃さなかった。

「チェーンバインドっ!!」

地面に生み出された小型の魔法陣から出現する無数の鎖が、謎の人物の体を素早く絡め取る。鎖はそのまま両手両足を拘束し、女性の動く手段を完全に封殺していった。バインドにより動けなくなった女性はやがて地面に倒れ、なのははバリアを解除するとゆっくりとその女性に近づいていく。杖は下ろさずあくまで油断は無く、毅然とした表情でなのはは声をかけた。

「その拘束は簡単には解けません。あなたが誰なのか、どんな理由で私に攻撃をしかけてきたのかまだ知りませんが、このまま身柄は拘束させて貰います。……あなたは最近噂になっている管理局員失踪事件に関与していると思われる組織『パンデラ』の一員で間違いないですか?」

女性は俯いたまま無言でその言葉に頷いた。

| 過去書庫『リリなのex系』 | 21:36 | comments:1 | trackbacks:0 | TOP↑

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リリカルなのはextend2

ヴィヴィオが家で番組を見ていた頃、丁度なのはも同じ番組に目を通していた。家へと向かう電車内でイスに腰掛けた彼女は、手に持った自身のデバイス・レイジングハート上に浮かび上がる3Dスクリーンをジッと見つめている。

「『パンデラ』の事件……やっぱり随分と被害が広がってきてるみたい。前にも話したけどこの事件、なんだかこれ以上大きくなったらマズイ気がするね」

【that's so(そうですね)】

レイジングハートは綺麗な英文法で答えた。このデバイスは便利な映像媒体でありながら、なのはと苦楽を共にしてきた優秀な相棒でもあるため、このようなやり取りで相談をすることは多い。

「今は執務官の人達が捜査してるって話だし、フェイトちゃんとかティアナが捜査に加わったりしてくれればきっと事件を解決してくれるとは思うんだけど……」

そう言いつつもなのはは苦笑する。

「ちょっと本局の腰が重めなんだよねぇ」

【There is not the damage of the main office upper echelon
(本局上層部からの被害がありませんからね)】

「若い局員ばかりを狙った誘拐、こういうあんまり見ない事件は逆によく注意することが大事なんだけど……私は今は管轄外だし」

【that's so(そうですね)】

答えるなりレイジングハートは勝手に3Dスクリーンを閉じてしまう。ポカンとしてなのはは首を傾げた。

「レイジングハート?」

【daughter to dote on waits now first of all
(とりあえず、今はヴィヴィオが待っていますよ)】

ふふふ、と笑ってなのはが答えた。

「……そうだね。早く帰らないとだ♪」



「では、そういうことでよろしく頼みます」

胸にたくさんの勲章を付けた軍人は気さくに頭を下げた。軍人の前にいた少女はその様子に内心では若干戸惑いながらも、引き締まって返事を返す。

「はい。この事件の一刻も早い解決のために尽力します」

ニコニコと微笑んで軍人は頷くと、片手で軽く挨拶してからその場を立ち去って行った。残された少女は肩の荷が下りたようにホッと緊張を緩めると、自分も調査に乗り出すため部屋を出て歩き出す。
少女の名前はティアナ・ランスター。深みのある橙色の長髪をなびかせた執務官だ。彼女は執務官になってまだ数年という若さではあったが、様々な事件を経験しつまれてきたキャリアは本局の上層部の目にも留まっていた。そこで今回の依頼が舞い込んできたと言う訳である。
歩きながら少女は今までの経験からこの事件に関する一抹の不安を感じ取っていた。

(それにしても本局の中将直々に捜査依頼を出すなんて、もしかすると上層部の誰かに被害が出たのかしら。それに今まで誘拐された人達の行方も全く分かってないと言う話……)

正面玄関から外に出ると、ゆっくりと夜空を見上げた。雲の切れ間からいつも通り星は瞬いている。

(……恐らくまだ間に合う。でも、もし間に合わなかった場合、これは大きな事件に発展するかもしれない)

ティアナはグッと拳に力を入れると、自分の車に向かって駆け出して行った。

| 過去書庫『リリなのex系』 | 01:54 | comments:2 | trackbacks:0 | TOP↑

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リリカルなのはextend1

暗い部屋。ピピピッとタッチパネルを軽快に操作する音が響き渡っていた。画面から漏れ出す人工的な青白い光はほんのりと辺りを照らし出している。画面を操作しているのは端麗で若い女性であった。名前は高町なのは。なめやかに垂らされた片側のポニーテールが特徴的で、若く艶やかな容姿は街中を歩けば思わず誰もが振り返ってしまうような美しさを暗闇の中でも輝かせている。
操作を続けながら、彼女は机の上に置かれた書類の山に目を向ける。

「うーん、もう遅いし、そろそろ帰らないと……」

なのはは本来仕事を怠けて溜め込んでしまうような性分ではなかった。しかし、今日は様々な事情が重なりすっかり仕事に手が付けられなかったのである。書類の山は20枚ほど重なっており、とても1時間やそこらで片付けれるようには見えない。

「仕方ない、持ち帰ろう」

彼女の家には帰りを待つ溺愛している娘が待っていた。これ以上遅くなってしまっては明日の娘を学校に送り出す作業に支障が出てしまうかもしれない。そう考えたなのはは指先の操作でタッチパネルの電源をオフにすると、そそくさと少ない手荷物をまとめ始めた。やがて一通りの物をショルダーバックの中に積み込め終えると、最後に書類の束もそこに差込み、戸締りを確認してから部屋を後にする。

部屋のドアには大きな文字でこう書かれていた。
『時空管理局』と。



「ママ、今日は遅いね~」

高町なのはの一人娘、ヴィヴィオは碧眼の瞳で窓の外を見ながら呟いていた。いや、正確には呟いたのではない。傍らには人間では無かったが話を聞いている存在がある。

「…………(ふよふよ)」

小さなウサギの人形がヴィヴィオの肩で心配そうに両手をバタバタを動かしている。ウサギはただの人形ではなくインテリジェントデバイスと呼ばれる人工知能を有し、自立で行動出来る記憶媒体であった。固有名称は『セイクリッドハート』であり、持ち主であるヴィヴィオやなのはからは呼びやすいようにクリスと呼ばれている。ただし、言葉を発する事は出来ないので意思を伝える時は体でのジェスチャーを駆使しなくてはならない。クリスの一見すると子供が駄々をこねている様にしか見えないその動きからもヴィヴィオは言いたいことを理解していた。

「そうだね、今日のご飯は思い切ってわたし達で用意しちゃおっか」

「……(コクコク)」

ヴィヴィオはまだ若い少女ではあったがとても頭がよく勉強熱心でもあった。そのため簡単な卵焼きなどの料理も作ることが出来る。帰りが遅い母親を暖かく迎えるために出来たての料理を振舞うことをクリスは提案していたのであった。もちろんヴィヴィオに依存は無い。そうと決まればすぐに彼女たちは準備のためキッチンの方へ向かって軽快に駆けていった。

「あれ?テレビ付けっ放し……」

キッチンが付随するダイニングのテレビは誰も見ていないのに番組の光を食卓に送り続けいたようだ。恐らくなのはが消し忘れていたのだろう。ヴィヴィオは料理に専念するためテレビを消そうとモニターに近づいた。

『……管理局の局員を拉致・監禁していると思われる組織『パンデラ』が関与していると思われる失踪事件が、今日で20件に及ぶことが確認されました』

「あ……」

テレビで放送されていたのは最近では一番世間を騒がせている事件についてのものだった。
管理局、正式名称は時空管理局と呼ばれるそれは『次元世界の平和』を守るために結成された巨大組織である。『次元世界を移動する技術を持っている』『他に存在する別世界について知っている』『かつ、管理局に所属している』これら三つの条件に合った世界を管理世界と呼び、その他の世界を管理が異世界と呼ぶ。時空管理局の存在目的はこの二種類に分類した世界で起こる次元犯罪を両方とも阻止し平和を維持することにある。ただ、そんな大規模なスケールで犯罪抑止を行っていると、どうしても様々な組織から狙いを付けられてしまう。そして、ヴィヴィオの母親、高町なのはもこの管理局で働く局員の一人であった。
ヴィヴィオはテレビを消すのをやめると、そのまま番組の話に注意を向けながらキッチンに向かう。クリスも後に習って彼女の横をフヨフヨと追いかけて行った。

「物騒な事件だねー……。でも、ママならきっと大丈夫だよね」

クリスの頭を優しく撫でながら、穏やかに彼女は呟く。

「だって襲われたら、きっと返り討ちにしちゃうもん。相手が泣いても逃げようとしても絶対に許さないー!って感じで」

「……(コクコク)」

僅かに冗談めかして言った言葉に平然と頷くクリスを見て、思わずヴィヴィオは噴出してしまう。そうなのだ、そう思っているのは彼女だけではなかったのである。テレビを見て生じた不安などあっさりと消え去り、ヴィヴィオはすぐに帰ってくるであろう母親を迎えるための特別料理を作るためエプロンを身にまとうのであった。

| 過去書庫『リリなのex系』 | 21:15 | comments:2 | trackbacks:0 | TOP↑

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